行けそうなセッションを見つけて告知を開いたら、出演者の欄がこう書いてあった。「山田◯◯(pf) 鈴木◯◯(b) 佐藤◯◯(ds)」。名前は読めます。でも括弧の中の2文字が読めない。そのまま画面を閉じてしまった、という経験は珍しくないですよね。
このページは、セッションの告知やホスト欄に書かれる略号を、掲載中の実際の表記から一覧にしたものです。想像で作った表ではなく、いま掲載されている開催回のホスト欄に実際に出現した書き方だけを数えて並べています。読み終えたときに、告知の括弧の中身が全部読める状態になることを目指しています。
括弧の中の2文字は、担当する楽器を書いている
あの2文字は、その人が当日どの楽器を担当するかを示しています。ジャムセッションでは、参加者を迎えて進行する側のメンバーが先に決まっていることが多く、告知にはその編成が載ります。ARBANのジャムセッション講座は、セッションには「ホスト」と呼ばれる進行役のプレイヤーがいて、参加者の意向を聞きながらその場で曲やメンバーを采配する、と説明しています。告知の「名前+2文字」は、その進行側に誰がどの楽器で座るかの一覧なのです。
つまり括弧の中が読めれば、行く前に「その日ピアノの席は埋まっている」「ギターは空いている」まで分かります。逆に読めないと、同じ情報がまったく届きません。
セッションマップに掲載している244会場のうち、今後の開催として登録されている回は1,364回・120会場です。このうちホストの名前が書かれている回は715回・74会場。さらにそのうち、パートの略号まで書かれている回が628回・61会場・21都府県あります。日本語で「ピアノ」「ベース」と書いている回は6回・5会場だけで、残りはほぼ全部がアルファベットの略号でした。読めないと困る、というのはデータの側から見てもそのとおりなんです(2026年8月31日時点)。
実際に出てくる略号は34種類
628回のホスト欄に出現した略号を、大文字・小文字の違いも含めてそのまま数えると34種類でした。下の表の「出てくる回」は、その略号が書かれている開催回の数です。同じ回に同じ略号が2度出ても1回として数えています。
| 略号(実際の表記) | 何の楽器か | 出てくる回 | 会場 |
|---|---|---|---|
| B / b | ベース | 267 | 37 |
| Pf / pf | ピアノ | 171 | 31 |
| Dr / dr | ドラム | 160 | 17 |
| P / p | ピアノ | 148 | 23 |
| Gt / gt | ギター | 126 | 16 |
| Ba / ba | ベース | 125 | 14 |
| ds / Ds | ドラム | 90 | 20 |
| Key / key | キーボード | 82 | 11 |
| Vo / vo / VO | ボーカル | 79 | 14 |
| sax / Sax | サックス | 56 | 11 |
| G / g | ギター | 55 | 17 |
| tp / Tp | トランペット | 32 | 9 |
| bs / Bs | ベース(バリトンサックスにも使われる表記) | 29 | 6 |
| as / As | アルトサックス | 28 | 9 |
| Bass / bass | ベース | 27 | 8 |
| ts | テナーサックス | 23 | 4 |
| Fl / fl | フルート | 14 | 4 |
| guitar / Guitar | ギター | 13 | 3 |
| drums / Drums | ドラム | 11 | 4 |
| Piano / piano | ピアノ | 10 | 4 |
| org | オルガン | 7 | 2 |
| Drum / drum | ドラム | 7 | 1 |
| kb / Kb | キーボード | 6 | 1 |
| Per / per | パーカッション | 6 | 4 |
| sx | サックス | 5 | 1 |
| d | ドラム | 4 | 1 |
| tb | トロンボーン | 3 | 2 |
| Wb / WB | ウッドベース | 2 | 2 |
| Tsax | テナーサックス | 2 | 1 |
| ss | ソプラノサックス | 2 | 2 |
| eb | エレキベース | 1 | 1 |
| Organ | オルガン | 1 | 1 |
| Vocal | ボーカル | 1 | 1 |
| Vocals | ボーカル | 1 | 1 |
| trombone | トロンボーン | 1 | 1 |
| perc | パーカッション | 1 | 1 |
| Percussion | パーカッション | 1 | 1 |
同じ楽器に何通りもの書き方があるのが分かりますよね。ベースだけで `B` `Ba` `bs` `Bass` `Wb` `eb` の6通り、ドラムは `Dr` `ds` `drums` `Drum` `d` の5通り、ピアノと鍵盤は `Pf` `P` `Piano` `Key` `kb` `org` `Organ` の7通りです。どれか1つを覚えても足りず、同じ楽器の別表記まで束で知っておく必要がある、というのがこの表から見えることです。
なお、パーカッションの `Per` `perc` `Percussion` は、ドラムとは別の担当として書かれています。ドラムセットの略号と並んで書かれる回もあります。
書き方は4通りある
略号そのものより先に、その会場がどの書式を使っているかを見たほうが速いです。628回を、略号の前後にどんな記号が付いているかで分けると4通りでした。1回の表記に複数の書式が混ざる場合は、両方に数えています。
| 書式 | 見え方の例 | 回 | 割合 | 会場 |
|---|---|---|---|---|
| 括弧でくくる | 名前(b) / 名前(Ba) | 387 | 62% | 47 |
| 名前のうしろに直接置く | 名前 P / 名前b | 163 | 26% | 19 |
| ピリオドでつなぐ | 名前.pf / Dr. 名前 | 61 | 10% | 7 |
| コロンで区切る | Gt: 名前 / Vo:名前 | 53 | 8% | 4 |
いちばん多いのは括弧で、387回・47会場と6割を超えます。次が「名前のうしろに一文字だけ置く」形で163回・19会場。この形がいちばん見落としやすくて、「石井◯◯p 安東◯◯b」のように空白しか区切りがないと、名前の一部に見えてしまうんですよね。ピリオドの形は `Dr. 名前` と前に付く場合と `名前.pf` と後ろに付く場合の両方があります。
ここが実務的にいちばん役に立つところなのですが、会場は書式をあまり変えません。 628回のうち、1回の表記の中で書式が1種類だけだった回は592回(94%)で、混ざっていたのは36回だけでした。会場単位で見ても、61会場のうち50会場が1種類の書式しか使っていません。2種類が8会場、3種類が1会場、4種類が2会場です。
つまり、一度その店の書き方さえ掴めば、次からは同じ形で読めます。 初めて開いた会場ページで1回だけ読み方を合わせれば、その会場の告知はそれ以降ずっと読める、ということです。
同じ2文字が別の楽器を指すことがある
ここは正直に書いておきます。略号は完全な一対一対応ではありません。
いちばん紛らわしいのが `bs` です。ヤマハの楽器解体全書は、サクソフォンについて「現在おもに使われているのは、音程の高い順に、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、バスの6種類に落ちついています」と説明しています。この「バリトン」の頭を取って `bs` と書く流儀があるため、`bs` はベースとバリトンサックスの双方に使われうる表記です。
セッションマップの集計では `bs` をベースとして数えています。その根拠は実際の並び方です。`bs` が出てくる29回・6会場を確認すると、同じ回に `B` や `Ba` など別のベース表記が併記されている回は0回でした。ベースが別に立てられていないのに `bs` だけがある、という並びなので、この29回についてはベースとして扱っています。一方で、同じ回にサックスの略号(`sx` `as` `ts` など)が並んでいる回は6回あり、管楽器が同席する場面でも `bs` はベース側として書かれていました。
読者側の見分け方としては、同じ回の他の略号を見るのがいちばん確実です。ベースの表記が別に立っていれば `bs` は管楽器側、立っていなければ `bs` はベース側、という読み方になります。判断が付かないときは会場へ確認するのが確実で、この曖昧さは表記の側にあるものなので、読み違えても気にする種類のものではありません。
`d` も同じ性質を持っています。今回は4回・1会場だけの出現で、同じ会場の他の回が `ds` を使っていたためドラムとして数えました。1文字の略号は情報が少ないぶん、周りの並びから読むことになります。
略号の作られ方が分かると、初見でも読める
34種類を丸暗記しなくても、略号の作り方には共通の骨格があります。
管楽器は「音域+楽器名」でできています。 さきほどのヤマハの解説にあるとおり、サクソフォンにはソプラノ・アルト・テナー・バリトンといった音域の種類があります。この頭文字に sax の s を足したのが `ss`(ソプラノ)`as`(アルト)`ts`(テナー)`bs`(バリトン)です。`Tsax` のように省略せず sax を残す書き方もあり、これも同じ構造ですね。金管の `tp` はトランペット、`tb` はトロンボーンで、こちらは楽器名の子音を2つ取った形です。ヤマハの解説では、トランペットは「バルブを使って管の長さを変えて、音の高さを変えて」いるのに対し、トロンボーンは「スライドのおかげで、なめらかに、無段階に音の高さを変えられる」と、しくみの違いが説明されています。
鍵盤は3系統に分かれます。 `Pf` `P` `Piano` はピアノで、ヤマハの解説によれば「鍵盤を押すと、その奥にあるハンマーが下から弦を打ちます」という打弦の楽器です。`org` `Organ` はオルガンで、パイプオルガンは「風をパイプに送り、空気を振動させて音を出します」と、発音のしくみそのものが別です。`Key` `kb` はキーボードで、島村楽器の解説はキーボードを「スピーカー内蔵で、電源を入れればすぐに音が出る」もの、シンセサイザーを「音色を自由に作れる。バンドやライブで活躍」するものと整理しています。同じ鍵盤でも、告知で `Pf` と `Key` が書き分けられているときは、当日鳴る音が違うということです。
ベースは電気か木かで書き分けられます。 ヤマハの解説は「エレキベースは、ウッドベース(コントラバス)の音域を、ギターのような奏法で弾くようにつくられた楽器です」としています。`Wb` はウッドベース、`eb` はエレキベースの略で、どちらも書かれていない `B` `Ba` `Bass` は、その会場の常設楽器や当日の編成に合わせたベースです。
`ds` が複数形なのには理由があります。 ヤマハの解説は「ドラムセットはドラムスとも呼ばれ、パーカッションの楽器を集めて1人で全部演奏できるように工夫したものです」と説明しています。バスドラム、スネアドラム、タム、シンバル類の集合体を1人で受け持つので、drums という複数形が略されて `ds` になっているわけです。`Dr` は drum の頭2文字で、指す中身は同じです。
告知から自分の行く回を選ぶ手順
ここまでの内容を、実際に会場を選ぶ順番に並べます。
- その会場の書式を先に1つ決める。 ホスト欄を見て、括弧・コロン・ピリオド・空白のどれで区切られているかを確かめます。628回のうち592回(94%)は1回の表記の中で書式が1種類だけなので、最初の1行が読めれば残りも同じ形で読めます。
- 区切りの中身を上の一覧で引く。 34種類すべてを覚える必要はありません。上位9つ(`B` `Pf` `Dr` `P` `Gt` `Ba` `ds` `Key` `Vo`)のどれかが書かれている回は568回・55会場あり、略号のある628回の90%に届きます。まずこの9つだけで足ります。
- 自分と同じ楽器の略号があるかを確かめる。 同じ略号がホスト側に立っていれば、その回は曲ごとの入れ替えで回ります。立っていなければ、自分がその楽器の土台側に入る場面があります。パート別の埋まり方はホストは何の楽器を担当しているのかにまとめてあります。
- `bs` や `d` のような1〜2文字は、同じ回の他の略号と一緒に読む。 ベースの表記が別に立っているかどうかで、指している楽器が変わります。読み切れないときは、そのまま会場に確認して構いません。
- 略号が無い回・ホスト欄が空の回は、詳細ページを見る。 今後1,364回のうち649回はホストの記載自体がありません。会場一覧の詳細ページには、初心者向けの案内や見学の可否が載っている会場があります。演奏せずに一度見に行く選び方はセッションは見学だけでも行っていいで扱っています。
略号が書かれていない回のほうが多い
最後に、この記事の限界も書いておきます。掲載している今後1,364回のうち、略号まで読み取れるのは628回で、全体の46%です。ホスト欄が空の回が649回あり、日本語でパート名を書いている回は6回・5会場です。
そして、これはあくまで掲載されている表記の集計であって、当日ステージに立つ人数そのものではありません。 告知に3人しか書かれていなくても、当日は別のメンバーが加わる場合があります。略号は「行く前に分かる範囲の情報」として使うのがちょうどよい距離感です。
現場で飛び交う言葉のほう、たとえばテーマ・コーラス・4バースといった会話の用語はジャムセッション用語集にまとめています。この記事が扱ったのは「告知に書かれている表記」で、用語集が扱うのは「その場で話される言葉」です。両方あって初めて、告知から現場までが繋がりますね。
告知が読めるようになったら、次は今日のジャムセッションで日付順の開催一覧を開いてみてください。ホスト欄の括弧の中身が、自分の楽器の席が空いているかどうかを教えてくれます。ソロ以外の時間に何を弾くかはセッションでソロじゃない時間、何を弾いているのか、ホストという役回りそのものについてはホストミュージシャンとは?、楽器ごとの役割はジャムセッション パート別ガイドが続きになります。
参考・出典
- ヤマハ 楽器解体全書「サクソフォンの成り立ち:サクソフォンの仲間」 — サクソフォンの種類(ソプラニーノ/ソプラノ/アルト/テナー/バリトン/バス)
- ヤマハ 楽器解体全書「ドラムのしくみ:ドラムセットは打楽器の集合体」 — ドラムセットはドラムスとも呼ばれ、打楽器を集めて1人で演奏できるようにしたもの
- ヤマハ 楽器解体全書「エレキギターの弾き方:エレクトリック(エレキ)ベースの奏法あれこれ」 — エレキベースはウッドベース(コントラバス)の音域をギターのような奏法で弾く楽器
- ヤマハ 楽器解体全書「ピアノのしくみ:音が出るしくみ」 — 鍵盤を押すとハンマーが下から弦を打つ打弦のしくみ
- ヤマハ 楽器解体全書「パイプオルガンのしくみ:パイプに風を通して音を出す楽器」 — 風をパイプに送り空気を振動させて音を出すしくみ
- ヤマハ 楽器解体全書「トランペットのしくみ:発音のしくみは?」 — バルブで管の長さを変えて音の高さを変える
- ヤマハ 楽器解体全書「トロンボーンのしくみ:伸びたり縮んだりする楽器」 — スライドにより無段階に音の高さを変えられる
- 島村楽器「初心者必見!キーボード・シンセサイザー・MIDIキーボードの違いと選び方」 — キーボード/シンセサイザー/MIDIキーボードの区分
- ARBAN「初心者が知りたいジャムセッションの心得①|エントリー方法は? ルールや参加費は?」 — ホストと呼ばれる進行役のプレイヤーが曲やメンバーを采配する