言葉が分からないと、音楽以前に置いていかれる
初めてセッションに行ったとき、演奏以前に困るのが「何を言ってるか分からない」だったりします。
「じゃあテーマいきましょう」「ソロ2コーラスで」「4バースやる?」「ダイナミクスつけて」「そこはレガートで」
周りは当然のように頷いてるけど、自分だけ「?」が浮かんでる。この感じ、けっこうしんどいですよね。
でも、実はそんなに多くないんです。この記事ではセッションで使われる用語を6つのカテゴリに分けて整理しました。気になるカテゴリから読んでみてください。
カテゴリ一覧
| カテゴリ | こんな言葉が分かる | こんな人向け |
|---|---|---|
| 曲の構造 | テーマ、コーラス、フォーム、キー | まず最初に押さえたい人 |
| 演奏の進行 | イントロ、ソロ、4バース、エンディング、回す | セッションの流れを知りたい人 |
| リズム・テンポ | テンポ、グルーヴ、シャッフル、ブレイク、ダイナミクス | リズム隊・全パート共通 |
| コード・ハーモニー | コード進行、ツーファイブ、ボイシング、テンション | コードを追う楽器の人 |
| 奏法・表現 | バッキング、カッティング、レガート、ルバート | 演奏の指示を理解したい人 |
| 現場の言葉 | ホスト、黒本、チャージ、飛び入り | セッションの「文化」を知りたい人 |
曲の構造
テーマ
曲のメロディ部分のこと。セッションでは、最初にテーマを演奏して、ソロ回しをして、最後にまたテーマに戻るのが基本の流れです。「テーマいきましょう」と言われたら、曲のメロディを弾く(吹く・歌う)ターンだと思ってください。
コーラス
曲の構造を一周すること。たとえば32小節の曲なら、その32小節を1回通しで弾くのが「1コーラス」。「ソロ2コーラスで」は、曲の構造を2周分ソロを取ってください、という意味です。
「1コーラス」と「1番」は違うので注意。ポップスだと「1番・2番」はAメロBメロサビの繰り返しですが、セッションでの「コーラス」は曲全体の構造(AABA形式なら32小節)を1周することを指します。
> 「バース」「コーラス」の混乱に注意
>
> セッションで「バース」と言ったら、4バース・8バースのように「小節単位のソロ交代」を指すのがほとんどです(英語の綴りは "bars"、小節の意味)。ところが、洋楽(ポップス・R&B)の文脈では "verse" と "chorus" で曲のセクションを区別します。verseはAメロ的なパート、chorusはサビ。ヒップホップでも「バースを蹴る」のバースはverse(歌詞パート)のこと。同じ「バース」でも bars と verse でまったく意味が違うので、会話の文脈で判断してください。セッション現場では基本的に bars の方です。
フォーム
曲の構造そのもの。「AABA」「ABAC」「ブルース(12小節)」など。ホストが「フォームは?」と聞いてきたら、曲の構成を確認しています。最初は「すみません、分かりません」で大丈夫。譜面を見せてもらえます。
キー
曲の調。「この曲、キーは何?」は日常的に飛び交います。ボーカルの人は自分が歌いやすいキーを把握しておくとスムーズ。楽器の人も、原曲キーを知っておくと「Fで」「Bbで」といった指定にすぐ対応できます。
演奏の進行
イントロ
曲の導入部分。ピアノやギターが数小節弾いて、テンポや雰囲気を提示します。「イントロお願いします」と言われたら、曲の冒頭を作る役割。慣れないうちはホストが出してくれるので心配いりません。
ソロ / アドリブ
コード進行に合わせて即興で演奏すること。テーマの後に一人ずつ回ってきます。「ソロ回し」はメンバーが順番にソロを取ること。順番はホストが指名するか、アイコンタクトで決まります。
4バース(フォーバース)
4小節ずつ交代でソロを取る形式。ドラムと他の楽器が4小節ずつ交互にソロを回すのが一番よくあるパターンです。「4バースやろう」と言われたら、自分のソロを4小節で区切って次の人に渡す。短いので、フレーズを詰め込みすぎず、シンプルに。
8バース(8小節交代)もあります。
エンディング
曲の終わり方。いくつかパターンがあります。
- リタルダンド — だんだんテンポを落として終わる
- タグ — 最後の数小節を2〜3回繰り返してから終わる
- フェードアウト — だんだん音量を落として消えるように終わる
ホストが「タグで終わりましょう」「ラスト、キメで」と指示を出してくれることが多いです。分からなかったら周りを見て合わせれば大丈夫。
回す
「もう1コーラス回しましょう」は、曲の構造をもう一周すること。「ソロを回す」は、順番にソロを取ること。文脈で意味が変わりますが、どちらも「繰り返す」「順番に進める」のニュアンスです。
リズム・テンポ
テンポ
曲の速さ。BPM(Beats Per Minute、1分間の拍数)で表します。BPM120なら1分間に120拍。セッションでは「テンポ速めで」「もうちょっと落として」みたいなやりとりが日常的にあります。
グルーヴ
リズムの「ノリ」や「うねり」のこと。譜面通りに正確に弾いてもグルーヴが出るとは限らなくて、微妙なタイミングのズレや音の強弱が重なって生まれる、体が動き出す感覚。「グルーヴがいい」は最高の褒め言葉の一つです。
シャッフル
ハネたリズムのこと。「タタタタ」じゃなくて「タッタ タッタ」と弾む感じ。ブルースやファンクでよく出てきます。「この曲シャッフルで」と言われたら、跳ねるリズムで弾く、ということ。
ブレイク
演奏を一瞬止めること。全員がパッと音を止めて、次の瞬間にまた入る。決まると最高に気持ちいいやつです。ホストが合図を出してくれることが多い。
ダイナミクス
音量の強弱のこと。「ダイナミクスをつけて」は「ずっと同じ音量じゃなくて、強弱の波を作って」の意味。ソロが盛り上がるところで音量を上げて、静かなところで落とす。これができるだけで演奏がぐっとプロっぽく聴こえます。
コード・ハーモニー
コード進行
曲の中でコード(和音)が移り変わっていく流れのこと。セッションではコード進行が共通言語。これを追えるかどうかで、演奏の安心感がまったく違います。
トニック / ドミナント / サブドミナント
コード進行の中での役割を表す言葉。ざっくり言うと、トニック(I)は安定・「家に帰ってきた」感じ、ドミナント(V)は緊張・「帰りたい」感じ、サブドミナント(IV)はその中間。理論を深く知らなくても、「ドミナントからトニックに戻る」が曲の区切りということだけ感覚で掴んでおくと、コード進行を見失いにくくなります。
ツーファイブ(II-V)
ジャズで最も頻出するコード進行のパターン。Dm7 → G7 → Cmaj7 のように、IIm7 → V7 → I と進む流れ。スタンダード曲はこのパターンだらけなので、聴こえるようになると曲の構造がぐっと分かりやすくなります。「ツーファイブ分かる?」はセッション現場でけっこう聞く質問です。
ボイシング
コードの押さえ方・音の積み方のこと。同じCメジャーでも、どの音をどの順番で重ねるかで響きがまったく変わる。ピアニストがよく使う言葉で、「ボイシングを変えてみて」は「同じコードを違う押さえ方で弾いてみて」くらいの意味。
テンション
コードに追加するおしゃれな音。9th、11th、13thなど。「テンション入れて」は「基本のコードにちょっと色を足して」ということ。入れすぎると濁るけど、さりげなく入ると一気にジャズっぽい響きになります。
奏法・表現
バッキング / コンピング
ソリストの後ろでコード伴奏をすること。ピアノとギターの主な仕事です。地味に見えるけど、セッションではソロより重要と言ってもいいくらい。バッキングがしっかりしてると、ソリストが安心して弾ける。
ウォーキングベース
4分音符でコードトーンをつなぎながら歩くように弾くベースライン。ジャズセッションでベースが担当する基本スタイル。これができるベーシストはどこに行っても重宝されます。
リフ
短いフレーズの繰り返し。ファンクやブルースでは、リフがそのまま曲の骨格になっていることが多い。「Cissy Strutのリフ弾いて」と言われたら、あの有名なベースラインのこと。
カッティング
ギターでコードを短くシャキシャキ刻む奏法。ファンク系セッションの生命線。リズムギターの花形です。
ユニゾン
複数の楽器が同じメロディを同時に弾くこと。「テーマはユニゾンで」は、管楽器もギターもみんなでメロディを合わせて弾く、ということ。揃うとカッコいい。
オブリガート
メロディの合間に入れる「合いの手」的なフレーズ。テーマを誰かが吹いてる後ろで、ピアノやギターがちょっとしたフレーズを挟む。やりすぎるとうるさいけど、さりげなく入れると曲が華やかになります。
スキャット
ボーカルが「ドゥバドゥバ」のように歌詞ではなく音で即興歌唱すること。ボーカルのアドリブソロはスキャットで取ることが多いです。
レガート / スタッカート
レガートは音と音をなめらかにつなげて弾くこと。スタッカートは逆に音を短く切ること。「もっとレガートで」は「つなげて歌うように」、「スタッカート気味に」は「歯切れよく」くらいの意味。同じフレーズでもレガートとスタッカートで印象がガラッと変わります。
ルバート / インテンポ
ルバートはテンポを自由に揺らして演奏すること。バラードのイントロなどで「ルバートで入りましょう」と言われたら、一定のテンポじゃなく、歌うように自由なタイミングで弾く、ということ。インテンポはその反対で、一定のテンポをキープして弾くこと。「ルバートで始めて、ドラムが入ったらインテンポで」はよくある指示です。
フィルイン
曲の区切り目にドラムが入れる「おかず」のこと。セクションの変わり目に「ダダダドン!」と入るやつです。短いけど、フィルインの入れ方でドラマーの個性が一番出るとも言われます。
現場の言葉
ホスト
セッションの進行役。曲を決めたり、メンバーを組み合わせたり、全体を回す人。困ったらこの人に聞けば大丈夫。
譜面 / リードシート
メロディとコード進行だけが書かれた簡易的な楽譜。セッションではフルスコア(全パート入りの楽譜)じゃなくて、リードシートを見ながら弾くのが基本です。
黒本 / 青本
セッションでよく使われるスタンダード曲集の通称。「黒本」は『ジャズ・スタンダード・バイブル』(納浩一 著)のこと。黒い表紙なのでこう呼ばれています。「青本」はその姉妹版。持っていると安心ですが、お店に置いてあることも多いです。
チャージ
セッションの参加費。お店に入るときに払います。だいたい1,500〜3,000円くらい。ドリンク代は別のことが多いです。
飛び入り
予約なしでセッションに参加すること。ほとんどのセッションは飛び入りOKですが、人気のセッションは満員で入れないこともあるので、初めてのお店は事前に確認しておくと安心。
全部覚えなくていい
ここに載ってる用語を全部暗記してからセッションに行く必要はありません。
分からない言葉が出てきたら、その場で聞けばいい。「すみません、それ何ですか?」で嫌な顔をされることはまずないです。むしろ「お、勉強熱心だね」と好感を持たれることの方が多い。
最初は「テーマ」「コーラス」「ソロ」「バッキング」の4つだけ分かっていれば、曲の流れは追えます。あとは通ううちに体で覚えていくもの。
セッションマップでは、各セッションに「初参加OK」の表示があります。用語に不安があっても、ホストが丁寧に説明してくれる現場なら安心して飛び込めますよ。